標準語の訛り 「中国シニア留学」

標準語の訛り

北京語は標準語ではない

北京語

正確な発音を身に付けたいので、訛りのない地域に留学したい。そう考えるシニアの方は少なくありません。

しかし実は、訛りにをそこまで気にする必要はありません。いくつか理由がありますので、詳しく説明していきます。

その前に、多くの方が誤解してらっしゃることを一つ指摘しておきます。それは、「北京語は中国の標準語ではない」ということです。

北京語とは、北京の地元市民が使う言葉、つまり「北京弁」のことです。

ですので、「北京語を勉強したいので北京に留学する」というのは、「大阪弁を勉強したいので大阪に留学する」と言っているのと同じことです。

中国の標準語は「普通話」

普通話

中国の標準語は「普通話」といいます。普通話は北京官話の発音と北方言語の語彙をベースに作られた人工の言語です。

では、北京官話とは何かというと、明清の時代に宮廷内で官僚たちが使っていた言葉です。北京市民が話す北京弁のことではありません。

なにせ首都である北京という単語を使ってますので、北京語=中国の標準語と勘違いするのは無理もありません。ですがこれは、東京が首都だから江戸っ子のべらんめぇが日本の標準語だ、と言っているようなものなのです。

では、中国の標準語である普通話が、訛りなく最も標準的に話されている地域はどこかというと、黒龍江省ハルビン市と吉林省長春市であると言われています。

ならば、留学先はハルビンか長春にすべきなのか? 実はそんなことはありません。

授業はすべて普通話

授業

まず第一に、留学生向けの中国語の授業は、すべて普通話で行われます。

留学生に中国語を教える教師のための国家資格があるのですが、この試験の中には普通話の正確さも含まれています。訛りのある人はこの資格を得ることができません。

ですので、北京の教師は北京弁で授業を行い、上海の教師は上海弁で授業をしている、というわけではないのです。

ハルビンに行こうと、西安に行こうと、広州に行こうと、授業はすべて普通話で行われます。

訛りに接する機会が少ない

訛り

第二に、留学中に訛りに接する機会は、実はそれほど多くありません。

留学中の生活をイメージしてみましょう。午前中は授業です。教師は普通話で授業を行いますので、訛りに接することは不可能です。

授業が終わったあと、午後の時間は自室で勉強したり、中国人学生と互相学習をしたりして過ごします。若い学生は標準的な普通話を使えますので、ここでも訛りと接する機会はありません。

接する機会があるとすれば、昼食や夕食を注文するときや、週末に学外に出て買い物をするときくらいです。

しかし、料理の注文にしても、買い物にしても、お店の人と言葉をかわすのは、せいぜい30秒から1分くらいです。

その程度で訛りが身に付くと思いますか? 言葉の勉強ってそこまで簡単なものではありません。

発音に最も影響を与えるのは母語

母語

第三に、これを見逃している方がほとんどなのですが、発音に最も大きな影響を与えるのは、地域ではなく「母語」です。

英語で説明したほうが分かりやすいかもしれません。日本人はかなり上手な人でも、日本人っぽい英語を話します。同様に、中国人は中国訛りの英語、韓国人は韓国訛りの英語を話します。

外国人が話す日本語も同様です。西洋訛りの日本語、中国訛りの日本語、韓国訛りの日本語。テレビに出てくる外国人タレントを見ていれば、よく分かると思います。

日本人は日本で勉強しようと、アメリカで勉強しようと、オーストラリアで勉強しようと、必ず日本人訛りの英語になります。

外国人が日本語を学ぶ時も同様で、東京で勉強しようと大阪で勉強しようと、中国人は中国訛り、西洋人は西洋訛りの日本語になります。

それと同じように、日本人はハルビンで留学しようと、上海で留学しようと、必ず日本人訛りの中国語になります。

訛りに最も影響するのは、学ぶ地域ではなく母語です。

発音に完璧は必要ない

発音

第四に、発音に完璧は必要ありません。

日本人は生真面目ですので、何ごとも完璧でないとダメのように考えがちです。中国語もネイティブと同じような完璧な発音を目指そうとします。

ですが、テレビに出てくる外国人タレントで、日本語の発音が完璧な人なんているでしょうか? 完璧じゃなくても通じる。本当はそうなんです。

そして、中国にやって来る留学生の中で、完璧な発音にこだわっているのは、実は日本人だけです。

日本人のお客様から留学先を選ぶ際によく出るのが、「発音矯正の選択科目がある大学」という条件です。

ですが、発音矯正の選択科目を設置している大学はほとんどありません。なぜならば、開設しても受講者が集まらないからです。

他の国の多くの留学生は、語学とはコミュニケーションを取るための道具に過ぎず、なので発音についても、コミュニケーションが取れる程度の正確さで十分、ということを分かっているのです。

他にも選ぶ条件はある

条件

誤解のないように言っておくと、発音が正確であることが悪いと言っているわけではありません。

不正確より正確な方がもちろん良いです。地域の訛りもないに越したことはないでしょう。

ですが、大学を選ぶ条件は訛りの有無だけではありません。他にも重視すべき条件はあるわけです。

例えば、「ハルビンで1クラス25人の大学」と「四川で1クラス5人の大学」ならばどちらを選びますか?

すべての条件を満足する大学なんて滅多にありません。訛りがないことは自身にとって絶対譲れない最優先条件なのか、じっくりと考えるべきポイントです。

訛りについてはこちらのページでも詳しく解説しています。参考にしてください。